2021年09月24日
理研、高温超電導接合で2年間の永久電流運転に成功
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

 非常に低い温度に冷やされた物質の電気抵抗がゼロとなる「超電導」現象は、エネルギーロスの小さい送電線やリニアモーターなどへの応用が進められているが、理化学研究所・生命機能科学研究センターの柳澤吉紀リーダー(機能性超高磁場マグネット研究ユニット)らの研究グループは24日、2018年に高温超電導接合を実装したNMR装置の開発に世界で初めて成功し他と発表した。、
 
 このNMR装置の2日間の磁場変化を観測したところ、理論上はコイルを冷やし続ければ外部電源なしで10万年間も磁場が発生し続ける性能を示し、通常NMR装置に求められる基準をクリアしていた。しかし高温超電導線材を構成する脆い銅酸化物が原子レベルでつながる接合部が、長期間にわたり永久電流を保持できるかは明らかでなかった。

 今回、共同研究グループは、400メガヘルツ(MHz)の磁場で約2年間絶え間なく永久電流運転し、磁場の精密測定を続け、高温超電導接合が長期間にわたって安定的な永久電流を維持できることを初めて実証した。
 
 1時間当たりの磁場の変化率は、2018年当時の1時間当たり10億分の1レベルから、時間と共にさらに小さくなり続け、2年目にはわずか1時間当たり300億分の1になった。これは、電流を供給しなくても300万年も磁場が発生し続けることを示している。

 NMR装置は10年以上にわたり永久電流を安定に維持する必要があるが、これまで高温超電導接合を実装したNMR装置では数日間の永久電流運転の例しかなかった。今回の成果で、年単位の永久電流保持に成功したことは、高温超電導接合を実装したNMR装置の実用化に向けて重要な成果であると言える。

 将来的には、希少で高価な液体ヘリウムを使用しない小型で汎用性の高いNMR装置の開発も可能になる。現在の世界最高磁場である1.2ギガヘルツ(GHz)(28.2テスラ)を超える1.3ギガヘルツ(30.5テスラ)の超高磁場NMR装置の開発を目指す。

本成果は、科学雑誌「Superconductor Science andTechnology」(2021年9月17日付)に掲載された。