2021年10月04日
住友化学、大分に核酸医薬原薬新プラント着工
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:住友化学

 住友化学は4日、ゲノム編集治療向けに約90%と極めて純度の高いガイドRNA(gRNA)の量産技術を世界で初めて確立したため、大分工場(大分県)に核酸医薬原薬の製造プラントを新設すると発表した。生産能力は現有設備の約6倍に拡大する。操業開始は23年半ばの予定。

 核酸医薬品は、化学合成での生産が可能な低分子医薬品と、標的へ作用する選択性に優れる高分子の抗体医薬品の特長を併せ持つ中分子医薬品。DNAやRNAの働きを利用して、病気を引き起こす遺伝子やタンパク質に作用する次世代の医薬品として注目されている。
 
 同社は、低分子医薬品の原薬および中間体の製造で培った有機合成や工業化技術を基に、13年から核酸医薬原薬の受託製造を行い、近年はゲノム編集治療に必要なgRNAと呼ばれる長鎖の核酸医薬原薬の量産化に取り組んできた。

 ゲノム編集技術は、ヌクレアーゼ(核酸を切断する酵素)を利用して、染色体上の特定の場所にある遺伝子配列を意図的に改変する技術。ノーベル化学賞の受賞(20年)対象となったCRISPR-Cas9(クリスパー・キャス9)と呼ばれるゲノム編集技術は、それまでの同技術と比較して、編集にかかるコストやスピード、効率に優れるため、現在の医薬品では根治が難しい疾患に対する治療薬として期待されている。

 クリスパー・キャス9を使った治療には、DNA切断酵素として、はさみのような働きをするキャス9に加え、これを遺伝子に導く役割をもつ高純度で従来の核酸医薬原薬の数倍(約100mer)の鎖長を持つgRNAが必要となる。
 
 住友化学は、これまでは困難とされてきた治療用途のクリスパー・キャス9に必要とされるgRNAを化学合成法により約90%の高純度かつ高収率で量産する技術を世界で初めて確立したため、製造プラントを新設する。


<用語の解説>
◆merとは :核酸分子の最小構成ユニットであるヌクレオチドが、核酸分子中にいくつ含まれるか、その個数を表す単位。


ニュースリリース
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1633320955.pdf