2021年11月10日
阪大、胎児の神経細胞に精密な温度センサー
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:大阪大学

 大阪大学 蛋白質研究所の鈴木団講師と、京都大学、JSTなどの共同研究グループは9日、神経細胞の成熟に重要な細胞内の仕組みが、温度によって精密に制御されることを発見したと発表した。

 一般に精製したたんぱく質は熱に弱く、機能を失いやすいため、体温付近での性質を調べるのは困難だが、鈴木講師らのグループは今回、動物の胎児の神経細胞に存在し、細胞の中で力を出して細胞の形作りに関わるたんぱく質と、温度に応じた力の制御に着目した。そして精製した3種類のたんぱく質を用いて、細胞内の現象を人工的な環境下で再構成した。
 
 たんぱく質は、精製すると熱に弱くなるが、赤外レーザーを用いた素早く精密な温度操作技術を顕微鏡による計測技術と組み合わせることで、体温付近での実験に成功した。その結果、37度付近でのみ、力の制御が鋭敏になることを発見した。
 
 母体の体温の精密な制御には、たんぱく質が出す力を整え、神経系の正常な成熟を支える役割があることが示唆された。また細胞に備わるさまざまな温度センサーの理解が進めば、ナノスケールの温度センサーを、人工的に作れるようになる可能性がある。

本研究成果は11月9日、アメリカ化学会発行の「Nano Letters」(オンライン)に公開される。