2021年12月09日
九大など 鳥や魚が群れをつくる幾何法則を解明
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:九州大学

 「鳥や魚の群れが自律的に秩序だった集団運動を示すことができるのはなぜか」を探る研究が盛んだ。これらの群れの動き、物質群はアクティブマターと呼ばれ、物理学から生命科学、工学まで広い分野が関わる。だが、これらの生き物が、どのように秩序だったパターンをつくるのかという「分子の群れの交通ルール」はこれまで明らかにされてこなかった。

 九州大学の前多裕介准教授(理学研究院)と、北海道大学の角五彰准教授(理学研究院)らの研究グループは8日、生体分子モーターによって運動する細胞骨格タンパク質の群れを“交通整理”する新たなルールを見出し、このルールを利用して細胞内にみられるような細胞骨格の壁構造を作り出すことに初成功したと発表した。

 研究グループは、細胞骨格フィラメントが群れる際に運動の方向を揃えていく点に着目し、運動方向の揃え方を精密に制御できる新しいマイクロ流体デバイスを構築した。その結果、細胞骨格フィラメントの衝突にはパターンがあり、そのパターンをもとに衝突角度を制御することで群れ運動の方向制御を実証した。さらに、群れ運動の制御法から、植物細胞に見られるような細胞骨格の壁構造を構築することにも成功した。
 
 これらの知見から今後、分子の群れを操る基本的なルールが明らかになり、生体分子モーターの化学エネルギーで動作する革新的デバイスの開発につながることが期待される。
 本研究成果は12月7日に米国科学雑誌「Nano Letters」で公開された。

<用語の解説>
◆ アクティブマター :自律的に動き、互いに相互作用しあう粒子の総称。小さいものでは微生物バクテリア、真核細胞、アリなどの昆虫、さらには魚や鳥、ヒツジやヒトなど大型動物も含む。近年は、自律的に運動するコロイド粒子も含み、生物・非生物を問わない広い概念となっている。

◆生体分子モーター :アデノシン三リン酸(ATP)を加水分解することによって生じる化学エネルギーを運動エネルギーに変換するたんぱく質。代表的なものに、アクチンの上を動くミオシン、微小管の上を動くキネシンやダイニンがある。本研究では、キネシンが微小管上を動く力を利用した微小管の運動を観測した。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/211208_pr6.pdf