2022年02月02日
東北大、宇宙ではドーパミンが低下し運動能力減弱
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

「月面探査」や「宇宙ステーション」など、宇宙空間が身近な場所になりつつあるが、「宇宙のような無重力下では、生物は運動能力が減弱し、健康の維持が難しくなる」とする研究結果を1日、東北大学大学院生命科学研究科の東谷篤志教授らの研究グループが発表した。

 宇宙の無重力環境は地上とは大きく異なり身体を支える力が必要ない。このため骨や筋肉が急速に萎縮する。東谷教授らのグループは、JAXAなどとの共同研究により、これまでにモデル生物である線虫Cエレガンスを用いた宇宙実験を複数回実施した。その結果、宇宙の無重力下で幼虫から成虫に成長した個体での筋肉タンパク質やミトコンドリア代謝酵素の低下と運動能力の減弱が認められた。たが、その要因は不明だった。

 今回、宇宙の無重力環境ならびに地上での疑似微小重力環境で生育した個体は、神経伝達物質の一つであるドーパミン量が低下し運動能力の減弱につながることを明らかにした。また、ドーパミン内生量の低下は、物理的な接触刺激の付与だけでも抑えられ、運動能力の減弱が改善した。

 これらの結果から、人類がより長期間宇宙に滞在するには、運動に加えて接触刺激の介入も健康を維持する上で大切な要素であることが強く示唆された。 同研究成果は、オープンアクセス電子ジャーナル「iScience」誌の2月号に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20220201_04web_space.pdf