2022年02月03日
北大、がん組織での浸潤・転移能検出に初成功
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 北海道大学大学院 医学研究院の田中伸哉教授(腫瘍病理学教室)らの研究グループは3日、大腸癌患者から摘出された癌組織を用いて、患者それぞれの癌細胞がどのくらい動く力を持っているのかを組織切片上で評価することに世界で初めて成功したと発表した。

 癌細胞が動く力(運動能・浸潤能)は、低分子量Gタンパク質のRacや、Cdc42によって制御されており、これらの分子が活性化されているほど癌細胞はよく動き、血管やリンパ管の中に侵入して転移しやすくなる。
 
 本研究では、外科手術によって摘出された大腸癌組織切片上(FFPE検体)で、活性化Rac/Cdc42に特異的に結合するプローブ溶液を、電界非接触撹拌技術を用いて高速に攪拌させることにより、迅速・特異的にRac/Cdc42活性を検出することに成功した。

 今回の研究により,細胞のRac/Cdc42活性は(1)大腸の正常粘膜よりも腫瘍領域で有意に高い(2)癌細胞のステージが上がるほどRac/Cdc42の活性が上昇する(3)特に癌細胞が周りの正常組織に浸潤していく先端部で高い、などがわかった。さらに(4)Rac1/Cdc42活性が高い症例は、リンパ管浸潤しやすいこともわかった。

 この技術は大腸癌だけではなく、乳癌や脳腫瘍にも有用であり、がん患者の術後のフォローアップや、がん細胞のリンパ節転移の予測などに期待できる。
同成果は2月2日公開の「Scientific Reports」誌に掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220203_pr.pdf