2022年02月16日
北大、植物のバイオマス増加を支える酵素発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 理学研究院の山口淳二教授らの研究グループは16日、ゲント大学などとの共同研究によって、脱ユビキチン化酵素UBP12/13が、植物ホルモン「ブラシノステロイド」による植物成長促進効果の発現に欠かせないことを発見したと発表した。植物の成長促進に必要な新規因子として、脱ユビキチン化酵素UBP12/13を発見した。

 植物ホルモンのブラシノステロイドは、茎の伸長や葉面積の拡大をはじめ植物の成長促進に極めて重要な役割を担っている。
 
 ブラシノステロイドのシグナル伝達を開始するのが、細胞膜に局在する受容体BRI1であり、細胞中のBRI1の存在量は、ブラシノステロイドのシグナル伝達強度を適切に制御する上で重要。BRI1の存在量はユビキチン化修飾により誘導される液胞分解によって調節されることが明らかになっている。だが、BRI1のユビキチン化レベルがどのような仕組みで適切に保たれているかは未解明だった。

 今回、共同研究グループは、脱ユビキチン化酵素UBP12/13がBRI1と相互作用し、直接的にBRI1のユビキチン化修飾を取り外すことを発見した。UBP12/13を欠損する変異株では、過剰なユビキチン化修飾と液胞分解によってBRI1量が減少し、その結果、植物個体サイズが著しく低下することが分かった。植物で膜タンパク質の液胞分解を抑制する脱ユビキチン化酵素の発見は世界初となる。

 本研究成果は、植物細胞の膜局在タンパク質の存在量を適切に保つための分子機構解明に向けた重要な知見を提供すると同時に、ブラシノステロイドによる植物成長促進効果を強化するための新たな手法の開発につながることが期待される。本研究成果は2月15日に「EMBO reports」誌にオンライン掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220216_pr.pdf