2022年02月16日
京大、貴金属8元素のナノ合金に世界初・成功
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 京都大学大学院 理学研究科の北川宏教授らの研究グループは16日、貴金属と呼ばれる全ての元素(金、銀、白金など8元素)を原子レベルで均一に混ぜ合わせた、ナノメートルサイズの合金(ナノ合金)の開発に世界で初めて成功したと発表した。多元素の混合により新しい原子が生まれた。

 合金の歴史は古く、約5000年前の青銅器時代に遡るが、人類が全ての貴金属元素を原子レベルで混ぜ合わせて合金にしたのは初めて。また、多元素で構成されるナノ合金は、構成するそれぞれの原子が多種の異元素に囲まれ、その取り得る局所的な原子配置はナノ合金の構成原子数を遙かに上回る。そのため、貴金属8元素合金を構成する各原子は、単一成分の時とはまったく異なる電子状態を持っており、元の性質とは大きく異なる個性を有する新しい原子として生まれ変わることを今回、第一原理計算によって明らかにした。
 
 さらに、貴金属8元素合金は水電解の陰極(還元)反応である水素発生反応電極触媒として、市販のPt触媒と比較して10倍以上高い活性を示すことを明らかにした。
 
 金、銀、オスミウムなど、従来から水素発生反応触媒としては機能しないと考えられてきた元素を加えたにも拘わらず、このように格段に触媒活性が向上したことは、多元素が原子レベルで混合したことにより、不活性な元素が反応を促進する電子状態を持つ原子へ、あるいは活性な元素がさらに高活性な原子へと、新しく生まれ変わっているためと考えられる。

 この結果は、従来の金属触媒では達成できなかったその他の高難度な反応に対しても、多元素からなるナノ合金触媒が高活性をもつ可能性を示している。

 本研究成果は22年2月16日に国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載された。

<用語の解説>

◆貴金属8元素 :金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の8元素。


ニュースリリース参照
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2022-02/20220216-kitagawa-2cf8254cc60a4a6bb984358ebe51efa0.pdf