2022年02月17日
京大・東大「脳の神経活動を可視化」活動計測に成功
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 京都大学と東京大学の共同研究グループはこのほど、「脳の神経を可視化」する新規マウス系統を開発したと発表した。複雑な脳機能を解明するためには、生きた動物の脳から神経細胞の活動を正確に計測する技術が必要だが、京大院の坂本雅行特定准教授(生命科学研究科)と、東大院の井上昌俊特任助教(医学系)らの研究グループは 、高感度・高速カルシウムセンサーを安定して発現する遺伝子改変マウスの開発に成功したと発表した。

 このところ神経活動を可視化する方法として、蛍光カルシウムセンサーを用いた神経活動イメージング法が広く用いられているが、研究グループは今回、より正確な神経活動を計測するため、高感度・高速カルシウムセンサー( G-CaMP9a)を開発し、この新規センサーを細胞種特異的に発現誘導可能な遺伝子改変マウス(ノックインマウス)を作製した 。

 2光子励起顕微鏡を用いた生体イメージングによって神経細胞の活動を観察したところ、このマウスは感覚刺激に対する神経細胞の応答をより正確に検出できることが分かった。作製したマウスはカルシウムセンサーの発現レベルが安定して均一なため、 複雑な高次脳機能を解明するための有用なリソースになると期待される。
 同研究の成果は2月14日、米国の国際学術誌「 Cell Reports Methods」にオンライン掲載された 。


<用語の解説>
◆ノックインマウス: 遺伝子操作により、標的とするゲノム領域に外来遺伝子を導入したマウス。
◆神経発火 : 神経細胞の膜電位が活動電位に達すること。発火することにより上流の神経細胞から下流の神経細胞へ情報を伝達する。