2022年02月28日
北大、昆虫が触角で「空間認識」していることを証明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学大学院 理学研究院の小川宏人教授らの研究グループは、物体を触角で触っているコオロギの逃避行動を詳細に観察し、昆虫が周囲の空間を認識していることを明らかにしたと25日発表した。触角で障害物を検知すると、衝突を避けるように進路を変えることを発見した。

動物は様々な感覚器官によって外界を知覚する。空間情報を得るためには視覚が用いられることが多いが、夜行性や暗所を好む動物の場合、機械感覚(体性感覚)が使われる。しかしこれまでは、昆虫が触角(アンテナ)を用いて周囲を「認識」しているかは不明だった。周囲の空間全体を認識しなくても、触角への刺激に対して一定の関係性をもって反応すれば、触角を使う行動は説明できる。

研究グループは今回、球形のトレッドミル上にコオロギを保持し、その前や横に様々な物体を置いて触角で触らせた状態で短い気流刺激を与え、それによって生じる逃避行動を調べた。気流刺激は触角ではなく、腹部にある別の感覚器官(尾葉)によって検出されるため、もし逃避行動が変化すれば、コオロギが触角で得た空間情報を別の行動に反映させていることになる。

実験の結果、コオロギは物体の形や位置、向きによって逃避行動の進路を変えた。その進路は障害物との衝突を避けるようにカーブし、特に前に壁を置いた場合は、進路が変わるだけでなく、反応までに時間がかかり、逃げる距離が短くなった。片方の触角だけでも,障害物の縁を検出し,衝突回避できることを見つけた。

以上の結果から、コオロギは触角を使って周囲の障害物の配置や向きなどの空間配置に合わせて、別の感覚刺激によって生じる行動を変化させることがわかった。これは昆虫が触角を介して周囲の空間を「認識」していること、言い換えれば「イメージ」していることを示唆する初めての報告となる。
同研究成果は2月25日「Journal of Experimental Biology」誌にオンライン掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220225_pr.pdf