2022年03月01日
北大、北極温暖化は日本の梅雨期降水量にも影響
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:北海道大学

「北極温暖化の影響で、梅雨期の降水量が増加することを発見した」と、北海道大学院の佐藤友徳准教授(地球環境科学)らの研究グループが28日発表した。気候モデル実験や気象庁の予報データ分析などを行い、2020年(令和2年)7月に九州を襲った記録的な豪雨の原因の1つとして、北極温暖化の影響を挙げた。

 2020年夏は6月下旬にシベリアで記録的な熱波が観測され、その直後の7月上旬には中国の長江流域で大雨があった。日本の九州にも地域で記録的な大雨をもたらし、各地に大きな被害が発生した。
 
 研究グループは,シベリアで熱波を引き起こしたブロッキング高気圧に着目し、その発達度合いが大きいほど梅雨前線帯の降水量が強まることを発見した。

 また気象庁の全球アンサンブル予報データを分析し、ブロッキング高気圧の予測が現実的になるように補正することで、当初の予測では過小評価していた豪雨時の降水量が最大で20%増加し、予測精度が向上した。さらに、北極温暖化が進行することを仮定した気候予測シミュレーションを行ったところ、シベリアでのブロッキング高気圧の発生頻度が増加し、東アジアの夏の降水量も増加することがわかった。

 北極温暖化は雪氷や永久凍土の融解など北極圈に多大な影響を及ぼすことが知られているが、さらに大気循環を介して、日本周辺の豪雨災害とも関連することがわかった。北極温暖化は高緯度の熱波だけでなく中緯度の豪雨の要因となりうることを解明した。

 本研究の成果は、これまであまり着目されなかった北極域から中緯度地域への遠隔影響の一端を明らかにしたことに加え、その影響を気象予報技術に応用することで、豪雨災害の予測精度向上に寄与すると期待できる。なお、本研究成果は2月3日公開の「Environmental Research」誌にオンライン先行公開された。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220228_pr.pdf