2022年03月03日
北大、氷の成長が描くミクロならせんパターンを発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学低温科学研究所の村田憲一郎助教、金沢大学学術メディア創成センターの佐藤正英教授らの研究グループは3日、氷が水中で成長する際にその界面で氷結晶の一分子段差が自発的に集合し、より高い段差を形成しながら成長することを発見したと発表した。水中の氷の新たな結晶成長メカニズムを解明した。

 一般に、結晶の成長はその表面に分子・原子が層状に積み重なり、分子・原子スケールの段差を作りながら進行する。それに対し、成長中の氷の界面では、一分子段差の前進運動と氷の成長によって生じる潜熱の拡散が動的に絡み合う結果、一つひとつの一分子段差が特定の間隔で寄り集まって束になり、より高い段差を作ることが明らかになった。このような段差(ステップ)の自己組織化現象は「ステップバンチング不安定化」として知られている。
 
 しかし、融液成長と呼ばれる自身の融液からの結晶成長様式ではこれまで観察されていなかった。本研究は,水から氷へという最も身近な融液成長においてステップバンチング不安定化が存在することを実験的に明示した初めての研究となる。

 さらに、この現象で生じたステップ列が多方向から衝突することで、定常的ならせんパターンを描き出すことも発見した。このらせんパターンは渦巻成長といわれ、結晶の成長過程でしばしば見られる。しかし、結晶成長に伴うステップ列が自ら渦巻成長を誘起する今回の成長様式は極めてユニークであり、その過程を直接観察したのは本研究が初めて。

 本研究で得られた知見は、融液成長という最もシンプルな結晶成長様式の基礎的理解を深めると同時に、細胞・臓器等の冷凍保存で鍵を握る氷晶成長制御や、さらに広く半導体結晶を始めとする高品質・高機能の結晶性材料の開発・設計に向けた新たな指針となることが期待される。

同研究成果は3月1日公開の「Proceedings of National Academy of Science, USA」誌にオンライン掲載された。


ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220302_pr3.pdf