2022年03月08日
京大、高い致死率のウイルス増殖機構を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の野田岳志教授をはじめ、国立感染症研究所、フィリップ大学などの国際共同研究グループは7日、マールブルグウイルスのウイルス核タンパク質-RNA 複合体の立体構造をクライオ電子顕微鏡解析により明らかにしたと発表した。これにより、ヒトに致死的な出血熱を引き起こすマールブルグウイルスとエボラウイルスの増殖機構の一端が明らかになった。

 マールブルグウイルスは細胞で増殖する際、ウイルス遺伝子とウイルス核タンパク質から構成される螺旋状のヌクレオカプシドを形成する。ヌクレオカプシドはウイルス遺伝子を転写・複製し、ウイルス増殖環の中心を担う複合体だが、その形成機構はこれまでわかっていなかった。

 研究グループは、マールブルグウイルスのヌクレオカプシドのコア構造であるウイルス核タンパク質-RNA 複合体(NP-RNA 複合体)の立体構造を原子レベルで決定し、その形成に重要な相互作用を明らかにした。またマールブルグウイルスとエボラウイルスの NP-RNA 複合体の構造が非常に類似していることを明らかにした。

 マールブルグウイルスはエボラウイルスと同じフィロウイルス科に属し、ヒトに対して高い致死率の出血熱を引き起こす。近年もアフリカで散発的な流行が繰り返され、アウトブレイクを起こした。

 本研究成果は、マールブルグウイルス・エボラウイルスの増殖機構の解明と創薬に大きく貢献することが期待される。同研究成果は 3月4日に国際学術誌「Nature Communications」に掲載された。

<用語の解説>
◆マールブルグウイルス :1967 年に西ドイツのマールブルクで、ウガンダから輸入されたアフリカミドリザルからヒトが感染したことにより発見された、高い致死率を示す急性熱性疾患を引き起こすウイルス。ときに出血症状を来すこともあり、感染症法上、もっとも危険度が高い一類感染症に指定されている。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220307_pr.pdf