2022年03月09日
北大など、約7000年前の中国遺跡/家禽の骨調査
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学総合博物館の江田真毅准教授らと筑波大学、東京大学、蘭州大学などの国際研究グループは8日、約7000年前の中国・長江下流域の田螺山遺跡から出土したガン類の骨の組織学的・地球科学的調査によって、同遺跡におけるガン類の家禽化の複数の証拠を発見したと発表した。

 長江下流域は現在もガン類の越冬地だが、繁殖地ではない。しかし今回、同遺跡から出土したガン類の骨には、越冬地に渡ってきたものとは考えにくい幼鳥の骨が含まれていた。酸素の安定同位体分析から幼鳥だけでなく成鳥にも現地で生まれ、渡りを経験していないと考えられる個体が含まれていた。

 また窒素と炭素の安定同位体分析では、在地性のガン類は渡りをしていたガン類とは異なる食性をしていた。さらに、形態学的分析により在地性のガン類は大きさが類似しており、数世代にわたって野生個体から隔離されてきたことが考えられた。これらの在地性のガン類の骨は、放射性炭素年代測定によって田螺山遺跡が営まれた約7000年前のものであることを確認した。以上のことから研究グループは約7000年前にガン類が飼育されており、家禽化の初期段階にあったと結論づけた。

 家禽化されたガン類であるガチョウの歴史は、これまで約3500年前のエジプトに端を発すると考えられてきたが、今回の調査で、ガン類飼育のほうが歴史がより長かったことが明らかとなった。また、現在最も普及している家禽のニワトリの飼育も確実な証拠は約4000年前以降と考えられており、今回の成果は家禽の歴史も大幅に更新したといえる。

 同研究成果は3月8日付の「Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA」誌にオンライン掲載された。


ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220308_pr.pdf