2022年03月11日
北大など、牛伝染性リンパ腫の発症リスク解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 獣医学研究院の今内覚准教授および北海道立総合研究機構、農業共催組合などの共同研究グループは10日、牛伝染性リンパ腫(牛白血病)の発症と分娩との関係について、「牛は周産期に疾病が多発する」とするメカニズムの一端を明らかにしたと発表した。

 妊娠牛は流産を防止するために自身の免疫を抑制することが知られている。免疫が抑制された妊娠牛は感染症に罹患するリスクが上昇し、周産期は疾病が多発する。だが詳細な免疫応答機構や周産期に疾病が多発するメカニズムは不明だった。

 研究グループは今回、日本で発生が急増中の牛伝染性リンパ腫について、分娩が及ぼす影響を解析した。
 その結果、分娩前に血中のプロスタグランジンE2(PGE2)濃度が上昇する一方で、免疫応答は極度に低下していた。さらに、妊娠牛のPGE2の誘導にはエストロゲンの一種であるエストラジオールが重要であることを明らかにし、エストラジオールがPGE2シグナルを介して細胞性免疫応答を抑制することを明らかにした。
 
 これらの現象は,牛へのエストラジオール投与試験によって再現され、生体内でも同様の抑制機序が働くことを確認した。同研究によって,牛の周産期では,胎盤などから分泌されるエストラジオールがPGE2を介して細胞性免疫を抑制し、牛伝染性リンパ腫を含めた疾病の発生リスクの上昇に関与することが明らかになった。
同研究成果は3月9日公開の「PLOS ONE」誌に掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220310_pr.pdf