2022年03月24日
東北大「目指せ!絶滅危惧種ミヤマシロチョウの復活 」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

東北大学農学部の陶山佳久教授、兵庫県立大学の中濱直之講師らの研究グループは23日、絶滅危惧種ミヤマシロチョウの遺伝解析から、野生での復活に適した再導入源を明らかにしたと発表した。

ミヤマシロチョウは、本州中部の山地に生息する日本固有亜種で、長野県、群馬県、山梨県、静岡県にのみ分布するシロチョウ科の中型チョウ類。生息地の開発や植生遷移による食樹の減少から近年は絶滅の危険が増大しており、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類に選定されているほか、各県のレッドリストにも絶滅危惧種に指定されている。

生息地のうち、長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳は以前からミヤマシロチョウの生息地として知られていましたが、植生などの生息環境の変化に伴い2010年代後半から野外での生息が殆ど確認できなくなっていた。その個体群を復活させるためには、生息環境の改善に併せて、他の地域から移動すること (再導入) が必要だが、そのためにはもともとの八ヶ岳の個体群と遺伝的に類似した個体群を探索する必要があった。

研究グループは、長野県、山梨県、静岡県の各地域5集団 (八ヶ岳、浅間山系、赤石山脈) から遺伝解析を実施することで、各地域における遺伝的な違いを評価した。その結果、いずれの集団ともに遺伝的な違いはほとんどなく、どの地域から移動させても、もともとのミヤマシロチョウの遺伝子を乱す恐れが小さいことがわかった。

今回の研究は、ほとんど実態が不明だったミヤマシロチョウの地域間における遺伝的違いを明らかにしただけでなく、八ヶ岳への再導入源を示す重要な成果を得た。今後、同研究手法がほかの絶滅危惧種に適用されることで、遺伝子を乱すことなく個体群を復活させることにつながると期待される。
本研究成果は1月10日に、国際科学誌「Journal of Insect Conservation」の電子版に掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20220323_05web_butterfly.pdf