2022年04月12日
東北大「光がつくる電子のレンズ」新型顕微鏡 開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東北大学

 東北大学 多元物質科学研究所の上杉祐貴助教らの研究グループは11日、これまで電場や磁場で構成されていた、電子ビーム集束用のレンズを、レーザーなどの強力な光ビームによる「光場」で実現する、新しい手法を発案したと発表した。
 
 電子顕微鏡は、ウイルスなどの微小物、半導体デバイスの微細構造、さらに物質の原子配列をも可視化できる観察ツールだが、こうした高い分解能を達成するには、探針となる電子ビームを、原子ひとつの大きさに匹敵する0.1 nm以下にまで絞りこむ必要がある。

 研究グループはこの「光場電子レンズ」に対して、幾何光学にもとづいた理論的な解析により、焦点距離や球面収差を導くための重要な基礎となる公式を整備した。従来のレンズでは実現できない「負の球面収差」を発生することを示した。
 
 これにより、誰でも容易に光場電子レンズを設計することが可能になる。また今回、光場電子レンズが従来のレンズでは実現できない「負」の球面収差を発生し、極小の電子ビームサイズを得るのに必要な、収差補正器としても利用できることを示した。
 
 構造が複雑で高価な従来の磁場を用いる収差補正装置を光場電子レンズで置き換えることで、高分解能の電子顕微鏡装置を広く普及できると期待される。
同成果は4月7日付で、英国物理学会誌「Journal of Optics」誌に掲載された。

(用語の解説)
◆球面収差 :理想的なレンズから射出された光線(または電子軌跡)は、光軸上の焦点位置にすべて集束する。しかし、現実には光線の集束角に応じてずれが生じる。これを球面収差という。従来の電子顕微鏡用のレンズでは、集束角が大きいほど、電子は焦点位置よりも近い位置で光軸と交差する「正」の球面収差が生じる。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20220411_03web_beam.pdf