2022年04月20日
愛媛大など、新タイプの筋ジストロフィー治療薬開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

 愛媛大学大学院の金川基教授(医学系研究科)、東京大学大学院の戸田達史教授(医学系研究科)らの研究グループはこのほど、糖鎖異常型とよばれる筋ジストロフィーモデルマウスの治療に成功したと発表した。

 糖鎖は核酸・タンパク質に次ぐ第三の生命鎖とよばれ、タンパク質や脂質に結合した形で機能を発揮する生体にとって重要で、糖鎖の異常は時に疾患の原因になることがある。
 
 筋ジストロフィーは筋力が進行性に低下していく遺伝性疾患で、有効な治療法が未だに確立されていない難病。筋ジストロフィーの中には、糖鎖の異常によって発症する病型もあり、本邦の小児期筋ジストロフィーで二番目に多くみられる福山型筋ジストロフィーなどが挙げられる。
 
 糖鎖異常が生じる原因はさまざまだが、糖鎖の材料となる物質の異常も筋ジストロフィーの原因となることが知られている。

 今回研究では、糖鎖の生合成に必要な物質のひとつCDP-リビトールの合成酵素であるISPD(イソプレノイドドメイン含有タンパク質)の異常によって発症する筋ジストロフィーのモデルとして、ISPDが欠損したマウスを作出し、CDP-リビトールの合成不全と糖鎖異常が発症の原因になることを明らかにした。
 
 次に、モデルマウスに対するISPD遺伝子治療によって病気の進行を抑制できることを発見した。
 さらに、細胞内への送達効率を高めたCDP-リビトールを創出し、モデルマウスのプロドラッグ治療に世界で初めて成功した。
 
 糖鎖の生合成経路を治療標的とする薬剤の開発研究例は極めて少なく、今回の発見は糖鎖異常を発症要因とする疾患の治療法開発に向けて画期的な成果となり、筋ジストロフィーや先天性糖鎖不全症などの希少難治性疾患の治療法開発に貢献が期待できる。

この研究成果に関する論文は4月14日付の「Nature Communications」誌に掲載された。