2022年05月16日
名古屋市大、ヒスタミンの脳活動の仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:文部科学省

 名古屋市立大学大学院の野村洋寄附講座教授(脳神経科学研究所)らは、北海道大学の南雅文教授らとの共同研究で、脳内のヒスタミン量を増やす薬によって脳活動が調節されるしくみを解明したと発表した。
 
 体内でアレルギーに関わる物質として知られるヒスタミンは、脳にとって覚醒や認知機能に重要。アレルギー関連物質として働くヒスタミンは脳内にも存在し、神経細胞が情報をやり取りするために使われ、脳内のヒスタミンは覚醒状態の維持や、認知機能に関わると考えられている。

 例えばヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン薬はアレルギーの治療に用いられるが、脳内に移行すると眠気を引き起こしたり、記憶成績を低下させたりする。研究グループはこれまでの研究で、脳内のヒスタミンを増やす薬によって、忘れてしまった記憶が思い出せるようになることを明らかにしてきた。そのため、こうした薬はアルツハイマー病などの認知機能障害の治療薬になりうるが、実際に脳の活動をどのように調節するのかは分かっていなかった。

 今回研究では、カルシウムイメージングと呼ばれる方法を用いて、マウスの嗅周皮質に含まれる数十個の神経細胞の活動を、同時に、リアルタイムに観察することに成功した。そして脳内のヒスタミン量を増やす薬物であるヒスタミンH3受容体拮抗薬ピトリサントをマウスに投与し、神経活動の変化を解析した。その結果、ピトリサントの投与は嗅周皮質の神経活動全体には影響を与えなかった。
 
 しかし、1つひとつの神経細胞を区別してみると、ピトリサントは一部の神経細胞の活動を大きく上昇させる一方、別の一部の神経細胞の活動を大きく減少させることを見出した。そして、活動が上昇した細胞は、他の細胞たちと同期して活動しやすいことがわかった。これらの研究成果は「Scientific Reports」に掲載された。

<用語の解説>
◆ カルシウムイメージング :神経活動を測定する手法の1 つ。特に、多数の細胞の活動を区別して、同時に測定することができる。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220513_pr.pdf