2022年05月24日 |
東大、CO2を殆ど排出せず天然ガスから有用化学品 |
【カテゴリー】:新製品/新技術 【関連企業・団体】:東京大学 |
東京大学 大学院工学系研究科の山口和也教授らの研究グループは23日、世界で初めて600度のメタン酸化条件下で長時間安定な鉄酸化物サブナノクラスター触媒の開発に成功したと発表した。メタンから従来の鉄酸化物触媒を超えるホルムアルデヒド・一酸化炭素への転換を達成し、二酸化炭素排出量の低減にも成功した。 天然ガス(メタン)を原料とする新たな化学品合成技術が望まれているが、メタンの活性化には高温に熱する必要があり、こうした条件下では生成物がさらに酸素と反応し、二酸化炭素が排出されることが課題だった。 従来の鉄酸化物触媒では、メタン酸化に対して高活性を示すことが知られていたが、高温条件により触媒の劣化を引き起こし、触媒活性は時間とともに低下していく点が依然として課題だった。研究グループは今回、分子状鉄/タングステン酸化物を触媒の前駆体に用いることで、二酸化炭素の排出を抑えながら効率よくメタンを転換し、さらに600度でも触媒が劣化しない、長時間安定な鉄酸化物サブナノクラスター触媒の開発に成功した。 具体的には、従来の鉄酸化物触媒では二酸化炭素の排出量が生成物全体の27%であったのに対して、今回新たに開発した触媒では9%と少ない二酸化炭素排出量で、より効率良くホルムアルデヒド・一酸化炭素へ転換することに成功した。 本成果により、天然ガスを有用化学品に転換でき、現代社会が直面する石油依存という問題からの脱却や二酸化炭素排出の低減が可能になる。今後、高性能・高耐久性を持つ金属酸化物サブナノクラスター触媒を設計できるため、さまざまな工業触媒プロセスへの応用が期待できる。 同研究成果は5月19日付のオランダ学術誌「Applied Catalysis B : Environmental」オンライン版に掲載された。 ニュースリリース https://www.jst.go.jp/pr/announce/20220523-2/pdf/20220523-2.pdf |