2022年06月21日
名大、早期パーキンソン病の進行を腸内フローラで予測
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:名古屋大学

 名古屋大学 神経遺伝情報学分野の研究グループは、パーキンソン病患者の腸内フローラから2年後の症状進行を予測するモデルを作成した結果、早期患者では短鎖脂肪酸産生菌が少ない、またはムチン分解菌が多いことが進行を予測する因子であると報告した。

 研究グループは21日、パーキンソン病患者165例を2年間追跡するとともに、登録時の腸内フローラや臨床症状から2年後の症状進行を予測するランダムフォレストモデルを作り、重症度別に予測モデルの精度を評価した。

 その結果、重症度分類1期の早期パーキンソン病患者では、2年後のパーキンソン病症状進行を腸内フローラは79.2%の精度で予測できた。腸内フローラによる予測モデルの精度はパーキンソン病の重症化とともに低下し、3期の患者では予測精度は66.1%だった。

 パーキンソン病は、大脳の下にある中脳の黒質のドパミン神経細胞が減少して発症する。一般的な症状としては、ふるえや筋強剛、動作緩慢、姿勢保持障害などを中心とする運動症状だけでなく、便秘や頻尿、発汗、嗅覚低下、立ちくらみなどの自律神経関連症状も認められることがある。

 パーキンソン病の患者は1000人に1人~1.5人の割合でいるとされている。とくに60歳以上では100人に約1人と割合が高くなり、高齢化に伴い患者は増加している。40歳以下で発症する場合は若年性パーキンソン病と呼ばれる。治療の基本は、薬物療法となる。
 
 今回研究の結果から、早期パーキンソン病患者に対して腸内細菌叢を正常化、もしくは不足している腸内代謝産物を補給する治療介入を実践することによってパーキンソン病の症状進行を遅らせることが期待できると考えられ、今後のパーキンソン病に対する治療手段として一役を担う可能性が示唆された。