2022年06月28日

東北大、磁気のないハーフメタル創製に成功

【カテゴリー】：新製品/新技術 【関連企業・団体】：東北大学

高度IT化社会を支える基盤技術には、超低消費電力、高速演算等の性能を持つ電子デバイスが必要不可欠です。これを受けて、デバイスの性能を飛躍的に向上させる物質として「ハーフメタル」と呼ばれる物質群が盛んに研究されている。 　 　これまで開発されたハーフメタルは強磁性体が中心だった。もし、ハーフメタルが反強磁性的であれば、外部への漏れ磁場が発生せず、高密度に集積してもデバイス内での磁気的相互作用による擾乱が起こらなくなる。そのため反強磁性的ハーフメタルとなる物質が長年探索されてきたが、今まで2例が見出されたのみだった。 　東北大学金属材料研究所の千星聡准教授と梅津理恵教授らの研究グループは28日、反強磁性的なハーフメタルの開発に成功したと発表した。「遷移金属元素の価電子数を合計で10にする」という独自の開発指針を基に、鉄、クロム、硫黄からなる化合物を合成した。 　 　本物質は低温で完全に磁化を消失し、かつ、ある温度以上では最大3.8Tの高保磁力を有するハーフメタル。優れた特性を示す反強磁性的ハーフメタル物質の合成に成功したことに加えて、物質の開発指針を実証した本成果は、今後の物質探索・開発を高効率化し、電子デバイス革新を加速させるものと期待される。同研究成果は学術雑誌 6月23日付「Scientific Reports」に公開された。 ＜用語の解説＞ ◆ ハーフメタル ：金属と絶縁体（半導体）の両方の電子状態を併せ持つ磁性体。スピンの一方(例えば上向きスピン状態)が金属的で、他方(例えば下向きスピン状態)が絶縁体（半導体）的である。ハーフメタルに流れる電流は電荷情報に加えスピン情報を併せ持つことから、スピントロニクス分野での応用が期待されている。 ニュースリリース https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/06/press20220628-01-magnet.html