2022年07月12日
北大、慢性ストレスで自己免疫疾患の増悪機構発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループは8日、正常マウスでは単独で病態を誘導しない睡眠不足による慢性ストレスが、全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスにて、大脳特定神経核のミクログリア活性化を介した神経の異常活性化の影響で異常行動を伴う重症化(精神変容)を引き起こす分子機構を解明したと発表した。

 代表的な自己免疫疾患のSLEでは、気分障害などを示す精神神経ループス(NPSLE)と呼ばれる重症の病態があり、その発症の分子機構は不明だった。研究グループは、その病態への慢性ストレスの関与を疑い、SLEモデルマウスを用いて検証した。

 慢性ストレス導入は、正常マウスでは不安を増強したが、SLEモデルでは逆に不安を減少させ、NPSLE様の脱抑制様行動を誘導した。また、内側前頭前皮質で異常に活性化したミクログリアからサイトカインの一種であるインターロイキン(IL-)12/23p40が産生され、神経細胞も活性化した。

 これらの変化は、IL-12/23p40中和抗体投与で抑制された。また、健常者や軽症のSLE患者と比べて、NPSLE患者では、モデルマウスと同様に髄液IL-12/23p40濃度が高値であり、前頭前皮質の体積がより小さかったことから、ヒトにおいても同様の発症機構が関与している可能性が示唆された。

 これらの結果から、SLEにおける前頭前皮質ミクログリアからの慢性ストレス誘導性のIL-12/23p40産生は、NPSLEの新たな治療標的となる可能性がある。
本研究は日本医療研究開発機構(AMED)ムーンショット型研究開発事業等の支援を得て行った。
 本研究成果は、7月11日公開の「 Annals of the Rheumatic Diseases 」誌にオンライン掲載された。
 
ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220712_pr.pdf