2022年07月13日
北大、高温で安定/実用的な熱電変換材料を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学電子科学研究所の太田裕道教授らと産業技術総合研究所の研究グループは13日、空気中・600℃で安定した性能を示す、実用的な熱電変換材料を発見したと発表した。
 
 熱電変換は、工場や自動車から排出される廃熱を再資源化する技術として注目されている。実用化されたPbTeなどの金属カルコゲン化物熱電材料は、熱的・化学的に不安定であり、毒性もあるため、大規模な応用に至っていない。PbTeなどと比較して、酸化物は、基本的には高温においても酸化しないことから、高温で使用可能な熱電材料として期待され、日本では30年ほど前から精力的に研究されてきた。
 
 これまでにいくつかの熱電変換性能指数ZTが高い酸化物熱電材料が提案されてきたが、再現性が低いため、実用化はされなかった。研究グループは2020年、Ba1/3CoO2が室温において良好な性能指数ZT=0.11を示すことを発見した(https://www.hokudai.ac.jp/news/2020/11/post-747.html
 
 本研究では、Ba1/3CoO2の再現性ある高温熱電特性を明らかにするため、Ba1/3CoO2エピタキシャル薄膜の高温・空気中における安定性を調べ、この安定な温度範囲内における熱電特性を計測した。
 
 その結果、Ba1/3CoO2が、空気中・600℃においてZT=0.55を示すことを発見した。高温・空気中で再現性良く高性能を示す実用的な熱電変換材料をついに実現したといえる。

なお、本研究成果は7月12日にACS Applied Materials & Interfaces誌(オープンアクセス)に掲載された。
(URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.2c08555

<用語の解説>
◆エピタキシャル薄膜 : 小さな結晶が、基板と呼ばれる板の上に、三次元的に結晶方位を揃えた状態で膜状に並んだもの。一枚の大きな結晶と同様の物理的性質を示すことが多い。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220713_pr.pdf