2022年07月14日

理研チーム「細胞の力覚異常が単眼症を引き起こす」

【カテゴリー】：ファインケミカル 【関連企業・団体】：理化学研究所

理化学研究所（理研）生命機能科学研究センター発生幾何研究チームの森下喜弘チームリーダーらは14日、周囲からの「力」を感じ応答する細胞の能力（力覚）の異常が、脊椎動物の先天性奇形の一つである単眼症を引き起こすことを発見したと発表した。 同研究成果は、単眼症を含む多くの先天性奇形発症の共通メカニズムの理解につながると期待できる。 左右の眼が融合する単眼症の原因遺伝子SHHの欠損は、眼胞細胞の増殖や分化の異常を引き起こすことが知られている。しかし、実際に眼胞の形を作り出す細胞集団の動きや組織の変形といった物理的なプロセスにどのような異常が現れるのかは不明だった。 今回、研究チームは、器官計測・操作が容易なニワトリ胚を用いて、高解像度イメージングや眼胞への外力負荷実験、数理解析や力学シミュレーションなどを駆使した複合的な実験・解析を行った。 その結果、（1）SHH遺伝子産物である分泌因子SHHを起点としたシグナル経路によって、細胞にかかる力の方向の感知とそれに対する応答が制御されている（2）SHHシグナルが働かなくなると細胞の力覚が異常になるため細胞集団の運動方向がランダムになり、結果として正常な組織変形が阻害され単眼症になることを発見した。 SHHシグナルはさまざまな臓器の形成に関わることから、先天性奇形の発症機構を細胞の力覚異常という視点から統一的に理解できる可能性がある。 本研究は、科学雑誌「Science Advances」オンライン版（7月13日）に掲載された。 ニュースリリース https://www.riken.jp/press/2022/20220714_1/index.html