2022年07月20日
北大、日本のシロイヌナズナで転移因子活性化
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 理学研究院の伊藤秀臣准教授の研究グループは20日、シロイヌナズナの転移因子(トランスポゾン)の環境ストレス応答が生息地域により異なる原因を明らかにしたと発表した。

 トランスポゾンは様々な生物に存在するが、生息環境とその活性化の関係についての理解は進んでいなかった。研究グループは、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、37℃の高温条件で育てると活性化するトランスポゾン「ONSEN」に着目した。ONSENは普段は眠っている(発現していない)が、高温条件下で目を覚まし、転写が活性化する。
 
 今回、日本に生息するシロイヌナズナのエコタイプ33品種について、高温条件下で育てた場合のONSENの転写量を解析した。その結果、Kyotoと名付けられたエコタイプにおいてONSENの転写量が顕著に上昇していることを発見した。この現象の原因を調べてみると、DNAメチル化酵素の1つであるCMT2の合成に必要な遺伝子に変異が見つかった。
 
 このことから、KyotoではONSENの活性化を抑制するために必要なDNAのメチル化が不十分なために、転写量が増加することが示唆された。DNAメチル化の減少の原因はCMT2メチル化酵素の欠損変異によるものと判明した。
 
 本研究で得られた結果は、環境ストレスで活性化するトランスポゾンのストレス応答と宿主植物の制御機構について、生息地域間で多様性を生み出す原因の一つとして、トランスポゾンの制御に必要なDNAメチル化酵素の遺伝子突然変異が寄与するという新しい知見を得ることができた。

 本研究成果は、2022年7月18日公開の「Frontiers in Plant Science」誌に掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/220720_pr2.pdf