2022年07月25日
「挑発を受けると攻撃的になる脳の仕組み」解明・筑波大
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:慶応大学

“他者から悪意を向けられると、苛立ったり攻撃的な気持ちになったりする”ー雄マウスも、ライバルに挑発されると、通常よりも激しい攻撃行動を示すようになる。このように、挑発を受けて攻撃行動が激しくなるとき、脳の中では何が起こっているのか。

 筑波大学(高橋阿貴准教授)、慶應義塾大学(田中謙二教授)、東北大学(常松友美助教)の研究グループはこれまでに、マウスを用いた実験で、他者からの挑発を受けたときに、脳内の背側縫線核で、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の入力が増加することを明らかにしてきた。

 背側縫線核にグルタミン酸ニューロンの投射を行う脳領域の一つに、不快情動やストレスに関わる外側手綱核がある。今回、この外側手綱核から背側縫線核への投射ニューロンが、社会的挑発を受けることにより活性化することを見いだした。

 この神経投射の活動を抑制すると、社会的挑発を受けても攻撃行動が起こらなくなることから、外側手綱核から背側縫線核への興奮性入力が社会的挑発による攻撃行動の増加に関与することが示された。さらに、社会的挑発による攻撃行動の増加には、背側縫線核の非セロトニンニューロンのうち、腹側被蓋野に投射しているニューロンが関与することが示された。

 本研究成果により、攻撃行動が過剰になるメカニズムの一端が明らかとなった。このような知見は、人間の暴力性の問題の理解にもつながると考えられる。

<用語の解説>
◆背側縫線核(はいそくほうせんかく、DRN) :中脳に存在する脳部位。セロトニンを産生し放出するセロトニンニューロンが存在し、そこから前脳の広い範囲に投射してセロトニンの供給を行っている。セロトニン以外にも、GABA やグルタミン酸、ドーパミン、神経ペプチドを産生するニューロンも存在する。

ニュースリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20220722_01web_brain.pdf