2022年09月13日 |
九大、重水素化カルボン酸の効率的な合成法 開発 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:九州大学 |
「重水素化医薬品」は近年、副作用が少なく効果が長続きする、などの特徴から注目されている。カルボン酸は、入手しやすく多様な構造へと変換できるため、医薬品の原料として広く使用されている。重水素化されたカルボン酸は重水素化医薬品の原料として有用なため、その効率的な合成反応の開発は盛んに行われてきた。 しかし、カルボン酸は酸性度が低く活性化が困難なため、これまでの反応では強塩基性の条件や、高温加圧などの過酷な反応条件が必要であり、カルボン酸の特定の箇所のみを重水素化することは困難だった。 九州大学大学院 薬学府の大嶋孝志教授らの研究グループはこのほど、3種類の試薬からなる触媒系を用いたカルボン酸の重水素化反応の開発に世界で初めて成功したと発表した。これによりカルボン酸の一箇所に、選択的に重水素を導入できるようになった。今回開発した反応を用いることで、脂肪酸やアミノ酸、ペプチド、カルボン酸を持つ医薬品等の重水素化体の合成が可能となる。 さらに今回の研究で、重水素化されたカルボン酸を原料に生物活性化合物の合成を行い、代謝に対する安定性が向上することも明らかにした。これは重水素を適切な位置に導入することによって医薬品の作用時間を延長できることを示している。 本研究成果は、重水素化された様々な構造の原料を提供できるため、新たな合成基盤としての活用が期待される。そのため医薬品をはじめとした機能性分子への重水素の利用拡大に大きく貢献できると考えられる。本研究成果は22年9月5日、科学雑誌「Nature Synthesis」に公開された。 ニュースリリース https://www.kyushu-u.ac.jp/f/49464/22_0906_01.pdf |