2022年10月18日
東北大、体細胞の燃焼を制御する酵素を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 栄養のとりすぎによる肥満は、2型糖尿病などの生活習慣病を引き起こす原因となる。近年、肥満が社会全体に蔓延しており、その予防・治療法の開発は喫緊の課題となっている。
 
 東北大学大学院医学系研究科の酒井寿郎教授(分子代謝生理学分野)らの研究グループは17日、エピゲノム・プロテオミクス解析を行った結果、通常は、タンパク質脱リン酸化酵素(MYPT1-PP1β)がエピゲノムの書き換え酵素と転写調節の両方を制御することでベージュ脂肪細胞の誘導を抑制していることを明らかにした。
  
 その一方で、寒冷刺激下では、活性化された細胞内でタンパク質リン酸化酵素(PKA)がMYPT1-PP1βを阻害し、ベージュ脂肪細胞を誘導することが明らかとなった。また脂肪組織特異的にMYPT1を欠損させたマウスは、高脂肪糖質食を与えても太りにくく、耐糖能異常を引き起こしにくい ことがわかった。
 
 この脂肪組織の質を変化させる過程で、タンパク質脱リン酸化酵素の働きが抑制されることで、エピゲノムの変化と転写因子を介した転写の活性化が誘導されることを解明した。

 本研究成果は、肥満や生活習慣病に対する新たな治療法や予防法への応用が期待される。
同研究成果は22年9月29日にオンライン版国際科学誌「Nature Communications」に掲載された。

<用語の解説>
◆タンパク質脱リン酸化酵素 :タンパク質からリン酸基を取り除く酵素。
◆エピゲノム :ゲノムの塩基配列以外の後天的に書き換えられる遺伝情報を指す。DNAのメチル化修飾、ヒストンのメチル化やアセチル化等の化学修飾など。
◆MYPT1-PP1β :タンパク質脱リン酸化酵素の調節タンパク質と触媒タンパク質。複合体形成し、標的タンパク質のリン酸機を取り除く。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/10/press20221017-01-beige.html