2022年10月24日
九大、電気機械的穿孔法で細胞への分子導入を促進
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学大学院 工学研究院の山西陽子教授、産業技術総合研究所の菅野茂夫主任研究員らの研究グループは21日、電界により誘起される気泡を制御して、細胞に力学刺激を与えることで、効率的に細胞膜に穿孔し、数メガダルトンの分子を細胞へ導入することに成功したと発表した。

 細胞膜穿孔技術は、細胞内で発現した生体分子の活性を可視化するだけでなく、遺伝子操作を可能にする重要な技術。だが、巨大なゲノム情報を持ちうる大きな分子を細胞へ導入することは困難だった。今回研究では、この技術を見直すことで、誘電体材料で覆われた微細電極からなるコアシェル構造のマイクロバブルインジェクターを用いて、エレクトロメカニカルポレーションで細胞に穿孔をつくり、巨大なゲノム情報を持つ大きな分子を細胞へ導入できることを示した。
 
 電極にパルス電圧を印加することで、電極の先端にマイクロバブルが発生し、細胞に電気と機械的刺激を同時に与えることができる。このような独創的な手法を用いることで、一般に分子の導入が困難とされる骨芽細胞やクラミドモナスにも、数メガダルトンの分子を導入することを可能にした。特に、細胞懸濁液の粘度を高めることで導入効率が向上することを見いだした。これは電界誘起気泡の繰り返しの膨張・収縮(振動波)によって達成されたと推定される。さまざまな種類の細胞への適用が可能で、新たな遺伝子工学への応用が期待される。
 本研究は10月20日に英国王立化学会の科学ジャーナル「Lab on a Chip」に掲載された。

<用語の解説>
◆メガダルトン : 原子や分子の質量を表す慣用的に使われる単位。

ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/50059/22_1021_01.pdf