2022年10月25日
岡山理大、貴金属を使用しないグラフェン 触媒能力解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:科学技術振興機構

 岡山理科大学 理学部の田邉洋一准教授らは24日、筑波大学、東北大学、大阪大学と共同で、「グラフェンによる3次元的な曲面に窒素を化学ドープした場合の電子状態と、電気伝導物性を解明したと発表した。
 
 3次元的に曲がったグラフェンと窒素ドープの組み合わせにより、電子が動き回る金属的な特性と減少が局在した絶縁体的な特性が共存することを発見した。

 グラフェンは、高い電気伝導性を示す炭素の2次元シートで、グラフェンの炭素原子を窒素原子や硫黄原子で部分的に置換すると、化学的に不活性なグラフェンを化学的活性な状態へ変えられることが知られており、これを利用した電極触媒材料の開発が行われてきた。
 
 さらに、グラフェンを立体化させることで、非貴金属触媒や導電性の触媒担体として優れた性質を持つことが報告されている。しかし、3次元的な構造を持つグラフェン(3Dグラフェン)と化学ドープの組み合わせがどのようにして高機能触媒に結びつくのかはよく分かっていなかった。

 今回研究グループは、3次元ナノ多孔質グラフェンと呼ばれる3次元のナノ多孔質構造を持つグラフェンの曲面上の炭素原子を窒素原子で部分置換し、窒素ドープした3次元グラフェンの電子物性を詳細に調べた。その結果、曲面と窒素置換の組み合わせにより、アーバックテールと呼ばれるポテンシャルの乱れによって電子が閉じ込められた状態と電気が良く流れる金属的な状態が共存することが分かった。

 今回、3次元構造を持つグラフェン上で触媒反応が起こる場所や担持触媒へ効率よく電子を輸送し触媒反応を促進する機構が明らかになったことから、化学ドープした貴金属を使用しない炭素系電極触媒や高機能触媒担体の更なる研究開発が進むことが期待される。
 同研究成果はドイツ科学雑誌「Advanced Materials」(10月8日付)にオンライン掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20221024_01web_3d.pdf