2022年11月10日
産総研、酒田沖メタンハイドレートに微生物マット
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

産業技術総合研究所(産総研)環境創生研究部門環境生理生態研究グループ 太田雄貴 研究員らはこのほど、山形県酒田沖の海底で表層型メタンハイドレート胚胎域の環境調査を実施したところ、地下からメタンの湧出を示唆する微生物マット(微生物の集合体)を確認したと発表した。微生物マットは複数箇所で幅が数mに達していた。
 
 微生物マットとその周辺の海底堆積物に含まれる元素を分析したところ、微生物マットの下ではモリブデンが通常の10~100倍に濃集していた。これは、他海域よりも酸素濃度が高いという日本海の海底特有の環境と微生物マット内での強い還元環境が作用していることを示唆している。
 
 今回の調査で、日本海のメタンハイドレート胚胎域における物質循環の理解とメタンハイドレート開発に伴う環境への影響を評価する上で重要な知見が得られた。
 
 本研究の成果は、表層型メタンハイドレート胚胎域における微量金属元素などの動態について新しい知見を提供します。また、深海底環境における希少金属元素の濃集と蓄積および鉱床の成因メカニズムの解明にも貢献する。

 日本海における表層型メタンハイドレートの存在は10年以上前から確認されていたが、メタンハイドレートや海底から湧出するメタンによって駆動される物質循環の過程には未解明な部分が残されている。今後は他の海域の調査とともに、生態系や食物網も含めた広範な物質循環の過程を解明していく方針だ。
なお、本成果は22年9月6日に「Chemical Geology」誌にオンライン掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2022/nr20221107/nr20221107.html