2022年11月16日 |
北大調査、グリーンランドの氷河と海洋環境 |
【カテゴリー】:環境/安全 【関連企業・団体】:北海道大学 |
北海道大学低温科学研究所の杉山慎教授らの研究グループは16日、複数のカービング氷河が流入するグリーンランドのフィヨルドを観測した結果、氷河の激しい融解によってフィヨルドの基礎生産が活発になることを解明したと発表した。 グリーンランドで記録的な氷河融解が起きた2019年の夏、氷河が流入するフィヨルドには窒素、リン、鉄分などの栄養素が前年より豊富にあり、大型植物プランクトンが大増殖した。解析の結果、氷河の融け水に起因する海水の汲み上げ機能(氷河ポンプ)が強く働き、中層から栄養豊富な海水が大量に湧昇し、高い栄養環境で増殖する大型ケイ藻類が出現したことが分かった。 この研究結果は、氷河の融解によってフィヨルドの栄養環境が良好になり、基礎生産が増加することを示している。しかし長い目で見ると、温暖化によりグリーンランドからカービング氷河が失われてしまうと氷河ポンプは機能不全に陥るため、海洋生態系への甚大な影響が予想される。氷河の融解が海洋環境に与える影響を、今後も注意深く観察していく必要がある。 同研究成果は11月4日公開の「Global Biogeochemical Cycles」誌にオンライン掲載された。 <用語の解説> ■カービング氷河 : 海に流れ込む氷河のこと。 ■ 基礎生産 : 光合成等によって有機物が生産されること。食物連鎖の基底をなしている。 ニュースリリース参照 https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/221116_pr.pdf |