2022年12月08日
東北大、抗マラリア薬キニーネの効率的合成に成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 東北大学理学研究科 林雄二郎教授らの研究グループは8日、わずか5つのワンポット反応容器で高収率かつ効率的にマラリアの特効薬であるキニーネの合成に成功したと発表した。

 キニーネは、マラリア治療に有効なため、長年にわたり効率的な合成法が望まれていた。近年はキニーネやその誘導体が金属触媒の配位子や有機触媒としても注目を集めていた。

 ワンポット反応は一つの反応容器で複数の結合の形成や複雑な分子の合成が可能であり、非常に効率的であると同時に廃棄物を削減する環境調和型合成方法といえる。林教授らの研究グループはこのほど5つのワンポット反応により、高収率かつ高選択的、最少ポット数でのキニーネの合成を達成した。

 アミノ酸から容易に合成可能な有機触媒を用いることで5つの反応をワンポットで行い、良好な収率かつ高い選択性で含窒素六員環化合物を合成した。その後、4つのワンポット反応によってキニーネの合成を達成した。この合成はグラムスケールで行うこともできるため、キニーネ及びその類縁体の合成的供給が可能であり、キニーネの誘導化では合成困難な類縁体を合成することで新規医薬品や有機触媒開発への応用が期待できる。
同研究成果は「Nature Communications」で、2022年12月7日付に公開された。