2022年12月19日
大阪公大、半導体材料3C-SiCの高い熱伝導率実証
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 大阪公立大学、イリノイ大学、エア・ウォーター、東北大学などの研究グループはこのほど、半導体材料3C-SiCが理論値に相当する高い熱伝導率を示すことを、熱伝導率の評価と原子レベルの解析によって初めて実証したと発表した。

 炭化ケイ素(SiC)は、次世代パワーデバイスの半導体材料として注目されており、温度上昇によるデバイスの故障や性能低下を防ぐために、熱伝導率が高い材料の開発が求められている。結晶では、構造が単純なほど熱伝導率が高くなるが、ダイヤモンドに次いで結晶構造が単純な3C-SiCではこれまで理論値レベルの高い熱伝導率の実証はできなかった。

 本研究では、エア・ウォーターが開発した3C-SiC結晶について、熱伝導率の評価および原子レベルの解析を行った。まず、熱伝導率の評価を行ったところ、3C-SiC結晶は大口径材料の中では熱伝導率が最も高いダイヤモンドに次いで2番目の熱伝導率を示すこと、髪の毛の50分の1の厚さの薄膜状にした場合、ダイヤモンドよりも高い熱伝導率を示すことを実証した。

 次に、高い熱伝導率を示す理由を調べるために原子レベルの解析を行ったところ、この3C-SiC結晶は不純物をほとんど含まず純度が高いこと、また、結晶内の原子が規則的に配列しており、単結晶としての品質が非常に高いことが分かった。さらに、3C-SiC結晶をシリコン基板上に形成し、界面の熱伝導率について原子レベルの解析を行ったところ、界面の原子配列に大きな乱れはなく、シリコン基板との界面も高い熱コンダクタンスを示すことが明らかになった。

 本研究成果により、3C-SiCが薄膜状でも高い熱伝導率を示すことが実証されたため、集積回路への応用が期待される。また、3C-SiCは現在普及している4H-SiCとは違いシリコン基板上での形成が可能なため、簡便に大量生産や大面積化できると考えられる。

本研究成果は、国際学術雑誌「Nature Communications」に11月24日にオンライン速報版で掲載された。