2022年12月19日
九大、手足など抹消血管の血流回復メカニズム解明
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:九州大学

 手足などの末梢血管の閉塞によって血液が循環しにくくなる末梢循環障害は、高齢化に伴い罹患者が増え続けている。血管閉塞後、血管の内皮細胞が活性化することで血管の新生や機能的成熟が起こると考えられ、内皮細胞を標的とする治療薬の開発が注目されてきた。しかし実際には、加齢や生活習慣病等の理由により既に血管内皮機能が低下している患者が多く、十分な効果は得られていない。
 
 九州大学大学院 薬学研究院の西田基宏教授らの研究グループは16日、自然科学研究機構、信州大学、京都大学などとの共同で、下肢虚血後のマウス血管において、血管内皮細胞由来弛緩因子が血管平滑筋細胞のTRPC6タンパク質をリン酸化することでチャネル活性を抑制し、その結果、遺伝子改変マウスを用いて血管の成熟が促進されることを明らかにしたと発表した。
 
 血管平滑筋に発現するTRPC6チャネルの活性を阻害することで、血管内皮機能に関係なく末梢循環障害を回復できることを明らかにした。

 生活習慣病や加齢により、血管内皮機能が低下した末梢動脈疾患患者に対して、TRPC6チャネルの直接的阻害が新たな治療戦略となる可能性を示した。今回の発見は、加齢や生活習慣など様々な患者背景に依存しない末梢循環障害治療の新たな可能性を提案するものと期待される。

 同研究成果は英国雑誌「British Journal of Pharmacology」(12月12日)とスイス誌「Cells」(6月28日)に掲載された。

ニュースリリース
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/853