2023年01月10日 |
京都大「加齢黄斑変性、長期間記憶されるリスク」 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:京都大学 |
加齢黄斑変性(AMD)は、頻度の高い神経炎症性疾患の一つであり、世界の失明原因の上位を占めているが、その発症メカニズムは未だ不明な点が多く、自然免疫を中心とした慢性炎症の関与が重要なことは分かっており、免疫関連遺伝子の変異による要因に加えて、喫煙や肥満などの炎症を惹起するような環境的要因の蓄積によって引き起こされると考えられている。とくに、肥満は喫煙に次ぐ重要な環境因子であり、肥満が引き起こす慢性的な全身性炎症がAMD発症に関与していると考えられている。 京都大学大学院 医学研究科の畑匡侑 助教(神経眼科)らの研究グループは、肥満を改善させることでAMD発症が抑えられるかを検討したところ、予想に反して、過去の肥満が自然免疫系に長期間記憶されており、晩年の神経炎症やAMDに悪影響を与えることを発見し、そのメカニズムを突き止めたと発表した。 本研究は、網膜疾患や神経炎症性疾患における免疫記憶の役割という新たなリンクを明らかにするとともに、免疫記憶への介入が新たな治療戦略となりうることを示唆している。 本研究成果は、2023年1月6日に、国際学術誌「Science」に掲載された。 <用語解説> ◆加齢黄斑変性:加齢に伴い、眼の中の網膜の中央部(黄斑部)に出血や浮腫をきたし、視力が低下する病気。放置すると進行して、視力の回復が不能になる。現在、日本人の視覚障害の原因疾患の4位で、近年、高齢化社会になるにつれ、その増加が問題になっている。網膜の外側には、脈絡膜という血管に富んだ膜がある。一般に加齢黄斑変性は黄斑部の後ろの脈絡膜に新生血管という異常血管が発生し、黄斑部を障害する。 (研究の概要) https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2023-01/230106_Hata-ac43fcfdd571ae2b70028d4fbbe905e4.pdf |