2023年01月25日
東北大、見落とされていた海馬の神経回路発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東北大学

 東北大学大学院 生命科学研究科の大原慎也助教らは25日、ノルウェーやドイツの研究グループと共同で、記憶に深く関わる大脳の一部である「海馬」と「内側嗅内皮質」の神経回路の構造をラット・マウスを使って調べた結果、海馬の腹側部が背側部とは異なる回路を構成し、内側嗅内皮質Va層のニューロンに情報を伝えることがわかったと発表した。記憶を司る脳領域で、これまで見落とされていた神経回路を発見した。

 これらの構造は海馬の腹側部と背側部で類似していると長らく信じられてきた。しかし今回の研究で、海馬の腹側部が背側部とは異なる回路を構成し、内側嗅内皮質Va層のニューロンに情報を伝えることが明らかとなった。

 「海馬腹側部」は情動を伴う記憶に関わることが知られている。海馬腹側部は内側嗅内皮質Va層を介して記憶の最終保存場所である「大脳新皮質」とつながっていることから、Va層が情動情報を伝える神経回路として、長期記憶の形成に深く関与すると考えられる。
 今回明らかになった神経ネットワーク配線を基に、情動を伴う記憶の形成メカニズムの解明が進むことが期待される。
同研究結果は23年1月20日付の「Cell Report誌」(電子版)に掲載された。

(用語の解説)
◆海馬腹側部とは :記憶の中枢である「海馬」は細長い形をした脳領域で、齧歯類(ラット、マウス)では背腹軸に沿って展開している。海馬の働きは腹側部と背側部で異なり、「海馬の腹側部」は情動を伴う記憶に強く関与する一方、「海馬の背側部」は空間的な記憶に関わることが知られている。

(発表の詳細)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20230125_01web_rodents.pdf