2023年01月27日
京大、低栄養でも神経細胞は成長する?
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 動物が成長期に摂取する栄養は、器官の形成に大きな影響を与えるが、どのような栄養素が、神経細胞の成長にどのような影響を与えるかなどはほとんど分かっていない。京都大学大学院 生命科学研究科の上村匡教授らの研究グループは、これに答えをみつけようと、低栄養条件下でのショウジョウバエ幼虫の感覚神経細胞を用いて研究を行った。
 
 その結果、ビタミンB群・ミネラル・コレステロールの複合的な不足に応じて、筋肉からシグナル伝達タンパク質Wingless(Wg)が分泌され、Wgが神経細胞に作用することで神経突起の分岐・伸長を促進することが明らかになった。
 
 つまり、個体の成長にとって不利な低栄養条件下では、感覚神経細胞は逆に成長する仕組みを備えていることがわかった。さらに、今回研究で見出した低栄養条件下で神経細胞を成長させる機構は、個体の生存を危うくする環境刺激に暴露されるリスクをいとわずに、食物の探索行動を続けている可能性が示唆された。
 
 今回研究で機能を明らかにしたタンパク質は、全ての哺乳動物が共通して持っているもので、今後、他の動物種における栄養と神経発達を結ぶ分子メカニズムを解明する足がかりとなることが期待される。
本研究成果は2023年1月17日に、国際学術誌「eLife」にオンライン掲載された。

(詳細)
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2023-01/2301_eLife_Hattori_relj-d74e86cfb65437b2caed005a08782f1a.pdf