2023年02月10日
北大・調査「放流しても魚は増えない」
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:北海道大学

北海道大学大学院 環境科学院の先崎理之助教は10日、ノースカロライナ大学などと共同で、魚のふ化放流は多くの場合で放流対象種を増やす効果はなく、その種を含む生物群集を減らすことを明らかなったと発表した。

飼育下で繁殖させた在来種を野外に放す試みは、さまざまな動植物で行われている。だが一方で、こうした放流は自然界には生じえない規模の大量の稚魚を放つため、生態系のバランスを損ね、放流対象種を含む魚類群集全体に長期的な悪影響を及ぼす可能性があることも懸念されている。

研究チームは今回、シミュレーションによる理論分析と全道の保護水面河川における過去21年の魚類群集データによる実証分析を行い、放流が河川の魚類群集に与える影響を検証した。

これらの分析の結果、放流は種内・種間競争の激化を促すことで放流対象種の自然繁殖を抑制し、さらに他種を排除する作用を持つため、長期的に魚類群集全体の種数や密度を低下させることが明らかになった。

本研究結果は、持続可能な魚類の資源管理や生物多様性保全に対する放流の効果は限定的であり、生息環境の復元などの別の抜本的対策が求められると指摘した。

なお、同研究成果は2月7日付「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載された。

ニュースリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230209_pr.pdf