2023年02月22日

北大、実用の室温で高電圧動作可能なスピンLED実現

【カテゴリー】：ファインケミカル 【関連企業・団体】：北海道大学

北海道大学大学院情報科学研究院の樋浦諭志准教授らの研究グループは22日、超高速動作に必要な高電圧下で高効率に動作するスピン発光ダイオード（LED）を開発したと発表した。 スピンLEDは、電子スピンによる超低消費電力の情報記憶と、光によるスピン情報の高速伝送を実現する新しい光電変換素子であり、次世代の省エネルギー情報基盤を構築するために必要不可欠。スピンLEDの超高速動作を実現するには高電圧下での動作が必須だが、室温かつ高電界下では電子のスピン偏極情報が急速に失われるため、高い性能がこれまで実現しなかった。 今回、樋浦准教授らの研究グループは、超低消費電力のレーザー材料として実用化されている、インジウムガリウムヒ素（InGaAs）量子ドットと、室温でスピンフィルタリング増幅が働く希薄窒化GaAs（GaNAs）量子井戸からなる、量子力学的トンネル結合ナノ構造を活性層に用いたスピンLEDを開発した。 高電圧下では電子のスピン偏極は活性層への注入前に電界によるスピン緩和が生じて低下してしまう。しかし、本研究では活性層への注入後にGaNAsのスピン増幅効果が働くことで量子ドットにおける電子のスピン偏極が高まり、高電圧下でも高い性能を実現できる。 今回研究によって、スピン偏極を高めるGaNAsのスピンデバイスへの高い応用性を実証した。今後、超低消費電力の光スピン配線の実現に向けたスピンLEDの開発が加速することが期待される。 なお同研究成果は2月22日公開の「Physical Review Applied」誌にオンライン掲載された。 ニュースリリース https://www.hokudai.ac.jp/news/2023/02/led-3.html