2023年03月09日
京大、バケツ一杯の水から魚の地域分化を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学理学研究科の辻冴月(つじさつき)研究員、渡辺勝敏准教授らの研究グループは8日、環境水に含まれる生物由来のDNA(環境DNA)を分析するだけで、複数種の系統地理を同時に推定することができる新手法を開発したと発表した。バケツ一杯の水から魚の地域分化を解明する手法を見つけた。

 生物種内における遺伝的な地域性や系統分化は、種の分布や進化の過程を推測するための重要な手がかりとなるが、この方法は多地点から対象種を多数個体捕獲し、組織DNAを個別に分析する必要があるため、多くの労力や時間が必要となる。
 
 研究グループは今回、環境水に含まれる環境DNAから効率的に正確な系統地理情報を取得する手法を開発した。最大の課題であった偽陽性配列(実験の途中で生じる本来存在しない配列)の除去のための効果的なデータスクリーニング方法を考案し、適用した結果、対象とした淡水魚5種すべてについて、一般的な捕獲調査と同様の地域分化パターン(遺伝的集団構造)の情報を得ることに成功した。
 
 本手法は、これまでにない簡便かつ効率的、非侵襲的な調査を実現し、系統地理研究を通じた生物多様性の理解に大きく貢献すると期待される。
同研究成果は3月7日に国際学術誌「Molecular Ecology Resources」にオンライン掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2023-03/2303_Tsuji-825799957ae548dc55a91ec539109bfb.pdf