2023年03月13日
北大、メカノケミカル反応に特化した触媒開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学工学研究院の伊藤肇教授らの研究グループは10日、ボールミルという粉砕機を用いたメカノケミカルクロスカップリング反応で高活性を示す新しい触媒を開発したと発表した。

 従来の触媒系と比較して、より温和な反応条件下、大幅な収率の向上及び反応時間の短縮を実現した。

 メカノケミカル鈴木-宮浦クロスカップリング反応は、有害な有機溶媒を用いずに様々な分子骨格を構築できるため、環境調和型の有機合成プロセスとして注目されている。だが、これまでのカップリング反応では、溶液条件用の触媒・配位子に添加剤を加えて用いていたため、メカノケミカル条件では必ずしも望み通りの触媒性能が発現せず、しばしば高い反応温度が必要だった。

 研究グループは、柔軟なポリエチレングリコール(PEG)鎖を結合したホスフィン配位子を用いると、このクロスカップリング反応が劇的に加速することを見出した。特に、室温に近い条件下でも、幅広い基質に対して効率良く反応が進行した。また、これまでの研究と比較して、多くの反応例で高い収率向上効果が見られた。
 触媒のPEG鎖が、触媒が固体に取り込まれて失活することを防ぐためと考えられる。今後、超高効率かつ環境に優しい省溶媒メカノケミカル有機合成プロセスの開発が期待できる。

本研究成果は3月9日付「Journal of the American Chemical Society」誌にオンライン掲載された。