2023年03月15日
産総研「高温で蓄熱、低温で放熱」の新規合金開発
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

 産業技術総合研究所の中山博行主任研究員、藤田麻哉チーム長、杵鞭義明主任研究員らはこのほど、高温で蓄熱して低温で力を加えると放熱する合金を開発したと発表した。組成を変えて蓄熱能力が大きくなるようにした合金を用い、その放熱や吸熱の温度を合金内部の残留応力を利用することで変化させ、吸・放熱の温度差も調整できる材料を開発した。チタンニッケル合金の相変態を利用する。氷のように融解や凝固を利用すると吸熱と放熱の温度が同じになる。新合金は放熱のタイミングや温度を制御できる。今後、蓄熱材としての開発を進める。

 産総研のチームは今回、廃熱などを蓄え、周囲が冷えてから温めたいタイミングで放熱するチタンニッケル合金を開発した。この合金は高温相と低温相で結晶構造が変化する。60度Cで蓄熱させ、環境を13度Cに冷ましてから120ニュートンの力を加えると22度Cに温まる。

 この相変態の温度を合金内部の残留応力で制御できる。熱処理の温度を変えた合金では、80度Cで蓄熱させ42度Cで放熱させられた。蓄熱量は合金1グラム当たり20―24ジュールと見積もられた。電気自動車ではモーターからの排熱を吸収し、低温環境で電池を温めるといった使い方を今後提案する。移動体は重量当たりの蓄熱量や動作温度、部材の形状などの条件があるため用途に応じて最適化を進めていく方針だ。廃熱の有効利用でカーボンニュートラル実現に貢献できるとしている。

ニュースリリース
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2023/pr20230308/pr20230308.html