2023年03月24日 |
広大、化学物質を感じて自発的に動く物体を構築 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:広島大学 |
広島大学大学院 統合生命科学研究科・数理生命科学プログラムの中田聡教授らの研究グループはこのほど、自律性の高い無生物自己駆動体を分子レベルから構築することに成功したと発表した。 中田教授らは、リズムとパターンに関する学問である「非線形科学」に立ち、あたかも生き物のように振る舞う、自発的に動く無生物の物体(無生物自己駆動体)を構築してきた。 これまでは、ランダムな運動や化学刺激に向かって進行する化学走性など、自律性の低い単純な運動しか再現できなかったが、今回、桜の葉の香り成分の一つであるクマリンを駆動体分子として用いたところ、生物が示す正と負の化学走性の繰り返しと環境に適合したさまざまな運動モードを示す、自律性の高い無生物自己駆動体を分子レベルから構築することに成功した。 今後の展開として、化学刺激として塩基以外の物質を用い、特徴的な運動様相を指標とした分子認識をおこなう実験系の構築が実現可能と考えられる。また、分子レベルからマクロな運動様相を設計するともに、数理モデルを用いて理論と実験の両輪から、環境に適合する無生物自己駆動体を構築することもできると考えられる。 また、今後はバクテリアの鞭毛モーターのように、手の届かないミクロな空間における再帰的かつ自発的な物質輸送や、自律的なマイクロリアクターの開発など、応用研究への展開が期待される。 本研究成果は、2023 年2月16日に、学術誌「Journal of Colloid and Interface Science」にオンライン掲載された。 |