2023年04月05日
九大、甘味を感じる分子の構造変化予測に成功
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 「人は口の中で甘味をどう感じるのだろうか」ー九州大学 歯学研究院の重村憲徳教授らの研究グループは3日、甘味受容体サブユニット(TAS1R3 )の活性化・不活性化過程の構造予測に成功したと発表した。

 研究グループは、分子動力学シミュレーションと、人工味細胞による受容体機能を解析し、TAS1R3 の膜貫通ドメインと人工甘味料や甘味抑制物質との相互作用について調べた。甘味受容体がどのような構造変化を経て活性化・不活性化するかのメカニズムはこれまで不明だった。
 
 その結果、結合サイトと離れた細胞内側に存在する水素結合を切断することで、シグナル伝達が進む可能性が示唆された。この予測は、人工味細胞を用いた機能解析によって支持された。また、人工甘味料サッカリンの結合部位のヒスチジン残基がpH感受性のマイクロスイッチとして機能し、サッカリンに対する感受性がpH により調節されることも明らかになった。

 今回の研究から、口の中や全身で機能する甘味受容体を標的にした甘味や血糖値をコントロールする物質の開発が期待される。また、甘味受容体が属する他のG タンパク質共役型受容体の動的活性化機構の予測に、重要な知見を提供するものとなる。
 本研究成果は英国の雑誌「Communications Biology」2023年4月3日付に掲載された。

(発表の詳細)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/52211/23_0403_02.pdf