2023年04月06日
電通大、超強磁場中で結晶の「のびちぢみ」計測
【カテゴリー】:新製品/新技術
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 電気通信大学 情報理工学研究科の池田暁彦助教らの研究グループは5日、室内世界最強の1000テスラ級電磁濃縮超強磁場発生装置を使い、600テスラの超強磁場下で結晶の「のびちぢみ」の瞬間的な計測に成功し、遷移金属酸化物であるコバルト酸化物(LaCoO3)中の新しい磁気(スピン)超流動状態の兆候を見いだしたと発表した。

 遷移金属酸化物は電子の自由度である電荷やスピンなどが強く相関し合うことで、多彩な秩序化が起こることから注目されている。特に、LaCoO3中には「磁気励起子」というユニークな自由度があるが、この磁気励起子の粒子的かつ波動的なふるまいには謎が多く、固体物理における最大の難問の一つとされ、60年以上にわたり研究が続けられてきた。

 今回、池田助教らの研究グループは、1000テスラ級電磁濃縮超磁場発生装置に独自開発の超高速ひずみ計測技術を導入することで、瞬間的に発生した超強磁場中でLaCoO3結晶の「のびちぢみ」を一瞬かつ一発で計測することに成功した。これにより、LaCoO3における磁気励起子の超流動状態の兆候を600テスラの超強磁場下で初めて確認することができた。
 
 本成果はコバルト酸化物の基本的な性質を明らかにするもので、今後スピントロニクス技術におけるスピン流生成や量子コンピュータなどへの応用が見込まれる。
 
 また、超高速ひずみ計測法は、超伝導体から金属まであらゆる固体に適用できる。今後も1000テスラ級の超強磁場において新たな電子状態や相転移などが発見できると期待される。
本成果はオープンアクセスの国際学術誌「Nature Communications」に4月4日に掲載された。

<用語の解説>
◆磁気(スピン)超流動状態 :固体中の相互作用する磁気的粒子がボーズ・アインシュタイン凝縮を起こした状態で、固体中の磁気粒子を摩擦なく輸送できると期待される。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_0405press_01web_magnetic.pdf