2023年04月19日 |
北大、遺伝子疾患の症候群に有効な薬剤発見 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:北海道大学 |
北海道大学医学研究院の江川 潔助教らの研究グループは18日、遺伝性の発達障害性疾患であるアンジェルマン症候群における、神経機能障害のメカニズムの一つを解明し、知的障害を改善しうる薬剤を特定したと発表した。 アンジェルマン症候群は重度の知的障害、てんかん、運動失調など、様々な神経機能障害を示す先天性の発達障害性疾患で、出生15000人に対し1人程度発症するとされるが、有効な治療法は確立していない。タンパク質の分解に係るUBE3Aという遺伝子の機能欠失が原因だが、神経機能障害の具体的な機序などは未解明だ。 今回、研究グループは、クロライドイオンによって惹起されるGABA作動性神経伝達に注目し、神経細胞内クロライド濃度を調整するイオントランスポーター、NKCC1、KCC2の発現がアンジェルマン症候群モデルマウスでは異常となることを見出した。NKCC1 を抑制することが知られている利尿薬のブメタニドを慢性的に投与すると、モデルマウスの認知機能障害は改善することが明らかとなった。また神経細胞の GABA 持続電流*1 は減少しており、細胞内クロライド濃度の制御は様々な機序で障害されていることが示唆された。 NKCC1などを標的とした薬剤は近年開発が進んでおり、今回の研究がアンジェルマン症候群患者の知的障害を改善させる治療法の確立につながることが期待される。 同研究成果は4月17日公開の「Scientific Reports」誌に掲載された。 <用語の解説> ◆ GABA 持続電流 … シナプス外に存在する GABA 受容体の持続的な活性化によって生じる電流。 ニュースリリース https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230418_pr.pdf |