2002年03月11日
経産省、「世界の石化産業動向」を国・地域別に分析
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:BASF

 経産省化学課は11日発表した「世界の石油化学製品の需給動向」の中で、予測の根拠とともに「世界主要国・地域の石油化学産業の動向」を、以下のように分析、報告している。

(1)アジア
○2001~2002年にかけて世界経済減速の影響を受けるものの、中期的には高い経済成長が見込まれる地域。特に、中国においては、2006年まで内需と輸出により7%程度のGDP成長率が見込まれ、石油化学製品の需要が急速に拡大する見通し。

○石化産業の生産能力は、全体として設備能力の増加はそれほど多くない。中国における欧米系企業のエチレン計画については、2005年時点で1計画、2006年時点で2計画の稼動開始を想定している。

◇日本
・石化製品のユーザーの海外移転及びアジア諸国からの製品輸入の拡大によって、石化製品の内需はほぼ横這いで推移する見込み。また、輸出の伸び悩み等から、輸出入バランスも悪化すると見込まれる。
・環境変化の中で、コスト競争力をいかに実現するかが喫緊の課題。

◇韓国
・2001年は2.9%の経済成長を達成する見込みで、2002年以降は年間4%程度の成長を見込んでいる。
・輸出の4割が中国向けであるが、中国市場をめぐる競合が激しくなることによる影響が懸念される。

◇台湾
・世界的なITブームを背景に2000年には5.9%の経済成長率を記録したものの、その後の米国経済の失速等により、2001年の経済成長率は-2.1%に落ち込む見込み。2002年の経済成長率は、世界経済の後退の底打ちが期待され、台湾も輸出を回復する見込み。
・台湾の石化誘導品メーカーは、従来、基礎原料・中問原料の不足に悩んでおり、2001年第3四半期にはFPCの増設の増設によるオレフィンの生産能力の増強がほぼ完了したものの、依然としてこの傾向は変わっていない。

◇中国
・2002年は米国経済の鈍化の影響等が懸念されるが、今回の見通しの前提としては、今後の経済成長率を7%と置いている。
・中国の需要は、引き続き大きな拡大傾向を維持すると考えられ、2005~2006年前後に大型エチレンプラントが稼働した後も、しばらくは誘導品での輸入が増加を続ける見通し。
・また、2002年から2003年にかけ、大型・中型プラントの増設が予定されている。最近、PTAの需要が増大しており、2002年200万トンの能力が500万トン弱に増強される見通し。

◇アセアン
・米国経済の減速に伴う世界経済の低迷に影響され、各国とも成長はやや鈍化する傾向。シンガポールでは2001年に-2.2%と落ち込んでおり、マレーシア0%、タイ1.5%。
・中東での大型エチレンプラントの稼働等を受け、各国とも大規模なプラントの新増設計画の動きは、今のところ見られない。

(2)西欧
○2001年は、前年の急成長から転じて景気が冷え込み、欧州委員会の見通しでは通年の経済成長率は1.4%。今回の2006年までの需給見通しにあたっては年2%の成長を前提とした。
○石化産業の再編の動きは続いており、業界の寡占化が進んでいる。また、今後、中東の石化産業の欧州進出の動向が注目される。
○欧州では2006年まで大規模なエチレン生産設備の新設計画はなく、デポトルネッキング250万トンの増設計画があるのみ。

(3)米州(米国)
○米国経済は2001年の第4四半期に向けて回復基調にあったが、同時多発テロにより国内景気は一気に冷え込み、石化製品への需要は回復していない。但し、流通在庫は極端に減少しているため、消責回復の兆しがあれば、需要の急速な伸びが期待される状態。
○石化プラントの新増設については、90年代の好景気を背景に2001年までにほぼ完成。最近の経済の低調さを反映し、BASF-FINA合弁のエチレンプラントの稼働が2001年秋にずれこんだほか、2002年以降もFormosaのHDPEプラント等について稼働の遅れが見込まれている。

(4)中東
○海外企業の資本、技術力、事業運営ノウハウ等を導入し、産油依存経済からの自立化、資源の有効利用、利益源の多様化を目指している。
○2001年初めにサウジアラビアで大型エチレンプラント3基(230万トン)が稼働を開始。今後、2006年までに、カタール(50万トン)、イラン(52万トン+110万トン)、サウジアラビア(100万トン)の新設が見込まれる。