2023年05月12日
北大、コエンザイムQ10搭載のナノカプセル開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 薬学研究院の山田勇磨教授らの研究グループは11日、コエンザイムQ10(CoQ10)を搭載したミトコンドリア標的型ナノカプセルの構築に成功したと発表した。薬剤性肝障害モデルマウスを用いた検証実験を行い、「ミトコンドリアを標的とする抗酸化療法」の有用性を明らかにした。

 解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェン(APAP)の過剰摂取は重篤な肝障害を引き起こす。APAP肝障害の解毒薬は1種類しかなく、治療開始の遅れが解毒作用の妨げとなり、始動した酸化ストレスを緩和できないことが問題となっている。
 
 研究グループは、酸化ストレスの主要発生源であるミトコンドリアを標的とした新たな抗酸化療法の検証を試みた。治療薬物にCoQ10(難水溶性抗酸化物質)を使用したCoQ10 搭載ミトコンドリア標的型ナノカプセルを肝障害モデルマウスに投与した結果、肝機能を改善し、肝臓組織の壊死領域を大幅に縮小させる治療効果を確認した。

 同抗酸化療法は、APAP肝障害に対する既存薬と異なる作用機序であり、酸化ストレスが原因となる疾患の治療にも有用と思える。医薬品、化粧品及び食品の有効成分には難水溶性のものが多く、可溶化技術への応用も期待できる。同研究成果は5月10日公開の「Scientific Reports」誌にオンライン掲載された。

<用語の解説>
◆ グルタチオン(GSH) : 生体内で合成される抗酸化物質。CoQ10と同様に活性酸素から細胞を保護する働きがある。肝臓では、異物を解毒する過程に関与する。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/230511_pr.pdf